鳥取県文化振興財団情報誌【アルテ】

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2016February

鳥取県芸術家百華Vol.82 造形作家 岡村 貴史さん

舞台美術制作に携わるきっかけは?

小さな頃から絵を描いたり、ものを造ったりすることが好きでした。専門学校ではアクリル絵画を描いており、卒業制作では優秀賞をいただいたこともあります。在学中の作品や卒業制作を見た工房の社長に声をかけてもらい、就職しました。その工房では、行楽施設やショウウィンドウ、舞台美術など様々な仕事を受けており、特別に舞台美術の仕事がしたかったというよりも、造ることが好きでふわふわとたどり着き、携わることになったような感じです。

工房に入ってすぐのころは、丁寧に細かく描いていたので制作に時間がかかって、怒られることがありましたね。当時の現場は今と比べると研修制度などもなく、担当になる仕事を次から次にこなしていきました。ほぼ辛かったという思い出です。それでも、一人で任せてもらえる部分もたくさんありましたし、10年続けられたのも、工房での仕事がどれも楽しかったからですね。

最近はどんなものを造っているのですか?

鳥取県にUターンしてから10年が経とうとしています。帰ってすぐの3年間は実家の美容室で働きましたが、知人からの依頼で看板やモニュメントなどを製作しているうちに、仕事になりそうだと思って会社を立ち上げました。それからは、いろんな仕事をいただいており、マスコットキャラクターの看板、製菓会社の什器※や食品サンプル、キャラクターグッズの原型製作など様々です。また、東京で勤めていた工房とはいまでも縁があり、演劇やポップスコンサートの舞台美術制作の助っ人に行くこともあります。

什器(じゅうき)…店舗などにおいて商品やカタログなどを陳列・設置するための器具・器材。

舞台美術と看板や什器との違いは?

看板などの造形物は、観る人が触れることもありますので、近くで見られることに気をつかって細かなところまで造り込み、仕上げをします。屋外に設置するものは特に、耐久性は重要なので長くきれいに残るものを造ります。舞台美術のほうは、逆に重たく造らないことや長く設置しても2~3週間なので丈夫に造りすぎないようにします。背景画や岩の表現なども細かく描きすぎると、全体がぼやっとしてしまうので、筆は大きく体を使って大胆に描きます。そうすると、映えますし、迫力がでてくるんです。

舞台美術を部分的に製作する時は、舞台全体を想像したり、観客を意識せずに、任された部分を造ることに集中しています。ただ、いつもすごいものを造ろうと思って作業しています。デザイナーが思い描いている以上のものを造りたいですし、看板などでも頼まれた以上のものを造りたいです。デザイナーに受け入れてもらえないことも以前はありましたが、出来上がったものを喜んでもらえるのはとても嬉しいですね。

鳥取で美術制作を始めて、地域に残したものが増えてきました。私のつくったものを、多くの方が知っていてくださっているというのも、この仕事のやりがいになっています。

制作したオブジェ

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