鳥取県文化振興財団情報誌【アルテ】

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2015February

鳥取県芸術家百華Vol.69 鳥取県合唱連盟 理事長 山田 衞生さん

音楽を始めたきっかけ

小学生の時、担任の先生にピアノを習い始めたことが始まりです。その先生は松江までピアノ、ヴァイオリンのレッスンに通っておられ、学校で毎日、熱心に練習をしておられました。それを見て「なぜそんなに夢中になれるのだろう」と興味を持った私にヴァイオリンを譲ってくれました。そこからヴァイオリンも教わるようになったのです。中学、高校では楽器から少し離れましたが、進学の際「好きなこと、音楽の道に進もう」と思い楽器の猛特訓を受け、小学生時代からの縁もある島根大に進学し、専門教育を受けるようになりました。ヴァイオリンを中心に環境に恵まれ、充実した毎日でした。当然のように卒業後はどこかのオーケストラの団員になると思っていました。

教師の道との出会い

高校生の時、父親を亡くしたこともあり卒業後は郷里に帰ることになりました。周囲の勧めと自分自身の気持ちがようやく重なって母校である倉吉東高校が教員生活の始まりとなったのです。教師になり、弦楽器の世界からいきなり吹奏楽部の指導を任され、楽器の調達をはじめ、指導においては課題も多く苦労の連続でした。今思えば熱心な生徒たちに支えられ、教師として指導の多くを学んだ時期でした。学園祭では全校のクラス対抗合唱コンクールが発足し、他に影響が出るほどに熱中する各クラスの姿に接し、初めて合唱の大きな力を見ることとなりました。これが長く合唱と関わることになる始まりでした。

練習風景
「県民による第九」30周年記念 練習風景

地域で子どもたちを育てる活動

学校の枠を超えた子どもたちを育てる活動を始めるようになったのは全国高総文祭鳥取大会(*1)で管弦楽による開会式演奏が行われることになったためです。高校に弦楽器が導入されるなど一挙に県内で学生の弦楽器の育成活動が起こりました。その中で生まれたのが中部では弦楽倉吉ジュニアオーケストラです。結成から20年、多くのメンバーが学び、プロになった人、倉吉室内合奏団で続けている人等、奏者育成のよいきっかけとなりました。

11月に第九の公演(*2)演奏がありましたが、30周年を記念して多くの鳥取県出身の若いプロ奏者が出演しました。全国高総文祭以後育った若者たちです。私が指揮を担当しましたが、前日の音合わせと当日のリハーサルで若々しい豊かな響きが加わり成果のある良い演奏となりました。育成に係わった一人として大きな喜びでした。

鳥取県の音楽育成において今後大切なこと

2つの問題をあげます。1つは「プロになって県外で活躍している人との交流をうまく行う」主に演奏を通して地域と交流を継続していくことです。加えて「指導者の社会的な育成を支援していく」教育機関、民間が協力し県内、県外の指導者が活動できる場を設定して育成支援を継続していくことです。

今回の第九で生まれた交流を大切にし、合唱とオーケストラの育成を伴う演奏活動につなげたいと思います。 

(*1)第22回全国高等学校総合文化祭 鳥取大会(平成10年8月7日~11日開催)の略称。前年のプレイベント(平成9年11月1日~3日)と本公演の開会式で県内高校生による管弦楽の演奏が行われた。

(*2)「県民による第九」30周年記念倉吉公演のこと。平成26年11月3日に「とりアート中部地区事業」として倉吉未来中心大ホールにて開催された。

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