鳥取県文化振興財団情報誌【アルテ】

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2014November

鳥取県芸術家百華Vol.65 みささ美術館 館長 岡野 壮人さん

なぜヴァイオリン職人に?

子どもの頃から木に触れること、木工が好きでよく遊んでいました。

中学生のころ、母親にヴァイオリンのコンサートに連れて行かれた時に、小さな楽器なのに大きなホール中に音を響かせることが出来るヴァイオリンの構造に興味を持ち始めました。ヴァイオリンを作る仕事に就くためにはどうすればいいのか、調べている時に、ヴァイオリン製作のドイツマイスターの資格をもつ無量塔蔵六(むらた ぞうろく)先生を知りました。

すぐに先生の下に入門したかったのですが、先生から高校は卒業すること、ヴァイオリンが弾けるようになることを条件に出されたので、高校に進学しこれまで経験の無かったヴァイオリンを、毎日4時間、練習しました。高校を卒業と同時に4名募集の狭き門を通過し、そこから4年間生徒として卒業後は1年半、先生の助手として活動しました。

職人の仕事は、「製作、調整、修理、修復」の4つに分類されます。この中で一番難しいのは、オリジナルに近づける必要がある修復です。修復を極めたいと考え、有名ヴァイオリニストのヴァイオリン修復を手掛けるドイツ人マイスターの東京の工房で働き始めました。この期間は色々な修復を手掛け、夏の間はフランスに滞在して修復を行っていました。

一般的にヴァイオリンで有名なのは、イタリアのクレモナだと思います。ただ、個人的なこだわりで、みんなが行きたい!というところには行きたくないんです。なので日本人の多いクレモナに行くよりも、世界中から面白い職人が集まる南フランスのモンペリエに行くことにしました。ここではワイン片手に他の職人たちと意見交換をし、海外の生活、文化を見てきました。

その後、倉吉に戻ってこられましたね

2009年に、自宅の倉庫を改装し、工房を作りました。需要があるのかと、先輩職人から大反対にあったんですが、地元で開業したいという思いが強かったので、倉吉に帰ってきました。開業時は無収入状態でしたが、口コミから徐々にお客様が増えていき、2年目くらいからは安定するようになりました。

それまでは、学んできた技術は自分のために使いたい、と考えていましたが、人のために使いたい!と思うようになりました。弦楽器を知ってもらうこと、クラシック音楽の敷居を下げることを目的に、ヴィオラ奏者の生原幸太さんとともに、“弦展”という企画を始めました。これは、弦楽器の製作資料展示と演奏を行うという企画です。この活動が、今のみささ美術館の運営にも繋がっており、当館では、1階は展示、2階では弦楽器の生演奏を行っています。

今は月に8回演奏会を行っていますが、今後は、より多くの日に開催できるようにしたいですね。目標は、365日毎日演奏会開催!です。

以前、三朝温泉に湯治にいらっしゃった方がご来館され、生演奏に感激されたことがありました。三朝って、癒しの空間なんですよね。素晴らしい温泉で体を癒し、コンサートで心を癒す。多くの方に音と温泉による癒しを体験してもらいたいです。

海外には楽器を展示する博物館は一般的に存在しますが、日本ではかなり珍しいです。

将来的には、三朝を弦楽器の“聖地”にしたいですね。みささ美術館を拠点にいつも弦楽器の音が溢れる場所にしたいと思います。

写真:展示の様子
演奏会の様子

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鳥取県文化政策課

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