鳥取県文化振興財団情報誌【アルテ】

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2012May

鳥取県芸術家百華Vol.36

謡曲を始めたのは?

30歳ぐらいの頃、大阪での会社勤めを辞めて鳥取に帰った時に、以前から謡曲をやっていた父親に勧められ始めました。初めは、京都から師匠が月に一回来られ教わっていましたが、鳥取で能の公演を重ねるうちに、京都にある河村研能会、林定期能楽会に誘われ仲間に入りました。京都でそれぞれの会の舞台が年に4~5回あり毎年そちらにも参加しています。

鳥取ではどんな活動を?

公式の舞台を催すにはかなりのお金が必要となり鳥取ではなかなかできませんが、正月と夏、年に2回の発表会を行っています。秋には、鳥取市民文化祭で観世流、宝生流、喜多流の三流合同の舞台を、県民文化祭で各年米子・倉吉・鳥取3地区持ち回りの舞台を行っています。他にも、夏の発表会前には智頭、若桜、鹿野などの小中学校で謡曲のワークショップも行っています。

また自宅では毎週2回、12人の弟子に謡曲を指導しています。中には、「とても行儀が悪く困っているので躾をしてほしい」と幼稚園の時にお母さんに連れて来られた男の子が二人いますが、今は小学2年生と4年生になり、いつの間にか一人で舞台に立てるようになりました。その姿を見ると成長に驚かされ、うれしく思います。

能の魅力

能は他の演劇と違い、写実的というわけではなくある一定のパターンがあって、それを利用して一つの曲を作っていきます。わずかな決まった型の中で、人の喜怒哀楽を写し出していくということに魅力を感じています。

地謡(じうたい)方(コーラス)に合わせてわずかに身体を動かし、面(おもて)を上げたり、面をつけない場合は直面(ひためん)といいますが、表情を変えることなく面をつけている様に顔を動かすことだけで、喜怒哀楽を表現します。

能は妙な芸術で、勉強は各自でやり、合わせは本公演の数日前に一同が集まる『申し合わせ』を一回行うだけです。難しい曲になると納得がいくまで何回か行う場合もありますが、普通は一回の合わせだけで本番を迎えます。能の世界は型がしっかり決まっているので、一回の申し合わせでちゃんと合うようになっているのです。お囃子には『囃子方』というグループあり、楽器によって流派が分かれています。そちらも、どんな流派の能が来ても一度集まるだけで、合わせることができるようになっています。

今後の活動について

謡曲は、声楽部門の中のひとつの芸術パターンとして、一つの芸術、アートとして極めれば面白いのではないかと思います。装束やお囃子がなくても声だけでその情景を彷彿とさせることのできる技量を身に着けたいと思います。

また、いつできるかわかりませんが、面や装束をつけずに紋付袴で演じる『袴能』をやりたいと思います。そして、自分が身につけたものは、何とかお弟子さんに継承したいと思っています。

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