創造事業 現場レポートvol.8 「駄目出し」の極意 ?英国演出家・ロズさんに学ぶ?

 演劇の作品創造における絶対不可欠なものに、演出家からの『駄目出し』があります。言葉のとおり、演出家が役者に対してダメなところを注意、指摘することを言いますが、そのやり方は千差万別。やんわり穏やかに諭す演出家もいれば、理路整然と指摘する演出家、うわさでは灰皿を投げながら怒りをぶちまける演出家など、本当に様々です。
 ヤング・プロデューサーズ・シリーズvol.2『トップガールズ』では、イギリスからロズ・フィリップスさんを演出にお迎えしていますが、ロズさんの『駄目出し』には、あまりの感動に鳥肌が立ちました。
 去る10月のキャスティング・オーディションで、出演者を二人組にして『トップガールズ』の1シーンを読ませたときのこと。まず、1脚のイスを用意して、どちらがそのイスに座るかを二人に決めさせ、1回読ませます。この後、ロズさんは感謝の言葉とともに、役者をとにかく褒めるのです。「素晴らしかったわ!」「あなたのこの部分がすごくよかった」など、日本の演出家から一度も言われたことのない役者たちは、目を丸くする有様。その後、「じゃあ次は、この人物がこういう状況にあることを念頭にやってみて」など、抽象的な指示で再び読ませます。驚きなのは、役者たちがロズさんからの投げかけを受け止め、自分自身で考えて、変えていくその姿でした。私も出演者の相手役となってロズさんの稽古を受けましたが、褒められるのは単純に嬉しく、何より自分自身で考えて表現する楽しさに心が躍りました。
 褒めることの大切さは、育児書やビジネスにおける人材育成本でも言われていることですが、演劇においても褒めることが役者を育てる大切なエッセンスなのだと思います。『駄目出し』と言えば、欠点を指摘されることと認識してしまっている体には、とても新鮮な喜びでした。

ヤング・プロデューサーズ・シリーズvol.2
プロデューサー 永 多 寛 佳


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