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文化施設と大学の連携(財)鳥取県文化振興財団 評議員 五島 朋子

 人口約17万人の小都市シビウ(ルーマニア)では、「国際演劇祭」を開催するようになって17年が経つ。一人の演劇人コンスタンチン・キリアック氏が始めたものだが、今ではシビウの国際的なプレゼンスを高め、広場や街路・歴史的建造物などを修復する公共事業を呼び込み、多くの市民ボランティアに支えられる文化イベントとなっている。運営の核には、キリアック氏が監督を務めるラドゥ・スタンカ国立劇場がある。小さな劇場だが、俳優の他、資金調達、舞台技術、マネジメントなど全員で約140人を雇用している。このような公共劇場は、ヨーロッパ、特に東欧では珍しくないが、私が興味を惹かれるのは、劇場と文化事業、そして大学教育が密接な連携をとっているところだ。
 シビウ大学の演劇とアートマネジメントの2コースには、劇場と演劇祭での実践が授業に組み込まれており、劇場スタッフは、作品上演、劇場運営、演劇祭実施を担いつつ、学生指導にもあたっている。また、劇場は、卒業生達の就職の受け皿ともなっている。演劇祭には、70カ国から様々なパフォーマーが参加しており、その運営で鍛えられた学生の中には、国際的な文化関係機関へ就職する卒業生もいると聞く。大学・劇場・演劇祭が、密に連携をとりつつ、芸術活動による地域発展を進める専門人材を育てる好例と言えるだろう。
 昨年より、鳥取県文化振興財団でも、アートマネジメントを学びたいという鳥取大学の学生をインターンシップとして受け入れてもらっている。地域の文化施設と大学で手を取り合いながら人材を育てていく。こうした連携のひとつとしてねばり強く進めていきたい。



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