舞台さんのひとりごとVol.9

県民文化会館が開館してまもなくの頃だったでしょうか、小ホールでとあるコンサートが催されたときのことです。準備は順調に進み、ほどなく他の楽器と共に、非常にコンディションの悪いドラムセットが搬入されてきました。訊けば、予算の都合で関係者が個人的な物を準備したとのことでしたが、とてもプロの演奏に耐え得る状態ではありませんでした。しかし、リハーサルが始まり、ドラマーがリズムを刻み始めた瞬間、その素晴しい演奏に私は自分の耳を疑いました。卓越した演奏技術は道具の良し悪しを超え、その場の空気さえも一変させたのです。確かに、最新で高価な機器はそれだけで素晴しい効果を発揮します。しかし、観客に大きな感動と喜びを提供できるのは道具ではなく、それを使う人間の「熟練した技術」なのです。舞台でさまざまな機器を操作する技術者として、最も大切なことを痛感させられた出来事でした。

とりぎん文化会館 舞台技術室 中 本 公 二


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