室内楽の醍醐味 ピアノ+弦楽のアンサンブルの魅力

通常、クラシックと言えば、大編成のオーケストラを思い浮かべる方が多いと思います。しかし、演奏者の少ない小編成による「室内楽」では、各楽器が対等の独創性を持って重奏する特徴があり、聴きごたえのある作品が、数多く発表されました。特に、ピアノと弦楽器のアンサンブルは多彩な音楽表現や音の響きが、魅力の一つです。

 室内楽とは、17世紀、君主や貴族のサロンにおいて少人数で演奏される合奏(宮廷音楽)が由来です。その後、演奏形態などによる音楽的な発展により、演奏の場が宮廷サロンから市民に開かれた演奏会へと広がっていきました。
 ピアノを伴った室内楽と呼ばれる主なものは、ピアノ三重奏(ピアノ、ヴァイオリン、チェロ)、ピアノ四重奏(ピアノ、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ)、ピアノ五重奏(ピアノ、ヴァイオリン×2、ヴィオラ、チェロ)などがあります。
 この室内楽をコンサート会場で鑑賞する魅力は、何といっても1つのパートを1人の奏者が演奏するため、パートごとに分かれている音楽上の役割が明確に見え、聴けるところです。その分、各ソリストには高い演奏技術が要求されます。
 この小編成の中に、オーケストラの効果が盛り込まれていたり、また、異なる楽器同士での会話しているのを聴きとったりするのが、醍醐味のひとつと言えます。
 特に、音楽の主要三要素といわれているメロディー、リズム、ハーモニーが、パートによって分担されたり、同時に演奏される部分など、弦とピアノの豊かな音の響きが聴きどころです。

「アヴォス ピアノ四重奏団コンサート」に出演される山田美怜さんに、お話を伺いました。

アヴォス ピアノ四重奏団について
 メンバーはイタリアのサンタ・チェチーリア音楽院で、室内楽に魅せられ意気投合した4名。自分以外の3名はイタリア人です。「アヴォス」というのは、北欧に伝わる伝説の妖精エルフの言葉で「幸運」という意味です。その言葉どおり、結成2年で、今年の2月と5月に開催されたイタリアの2大国際室内楽コンクールで最高位(1位なしの2位)を頂きました。今はプロの演奏家として音楽事務所と契約して、オランダなど、イタリア国外でも演奏の場が広がっています。
 演奏については、毎回、新しいアプローチをモットーに、グループの一体感を通して楽曲を魅力的に、新鮮に表現することを目指しています。そして、各パートのクオリティーをより豊かにすることを心がけています。
カルテットの難しさ、魅力
 人数が増えれば、意見をまとめるのが大変です。性格の全く違う4人がそれぞれ音楽的な意見を主張し、また、お互いの主張を聞き合い客観的に分析しながら曲を仕上げます。そうして、コンサートで良い結果が出た場合は手を取り合って喜びます。辛さ、悲しみ、喜びを一緒に分かち合う、グループで働くことの一番の魅力ですね。
今回の倉吉でのコンサートについて
 コンサート1日目は室内楽の魅力を、ピアノを基本とする3つの編成(二重奏→三重奏→四重奏)で演奏していきます。ブラームスの作品を、編成が変わることで変化する、音の厚みにご注目ください。2日目は、すべてピアノ四重奏での演奏で、名曲レパートリーからの選りすぐりの作品をお届けします。
 このコンサート会場として選んだのは300席の小ホール。この理由は、私たちの音楽表現を目前に“音と目”で鑑賞していただくためです。演奏者が同時に音を出す時の呼吸、メロディーの受け渡しの呼吸、間を取る際の瞬間的な呼吸や、繊細かつダイナミックな楽曲における音の動きを感じていただけたらと思います。

倉吉市出身。3歳から父の指導によりヴァイオリンを始める。全日本学生音楽コンクール中学生の部西日本大会にて入選。桐朋女子高等学校音楽科、同学園大学演奏学科卒業後イタリアへ渡る。ローマのサンタ・チェチーリア国立音楽院の修士課程であるアカデミー室内楽コース、ヴァイオリン・ソリストコース共に最高点で卒業。また、イタリア国内外の様々な室内楽コンクールにて優勝または上位入賞を果たす。これまでに日本、イタリア国内はもとよりヨーロッパ主要都市を中心に多くのコンサートに出演。2007年にアヴォス・ピアノ四重奏団を結成。


| 目次にもどる| バックナンバー|

| 県民文化会館ホームページTOP | 鳥取県立倉吉未来中心ホームページTOP | 鳥取県文化振興財団ホームページTOP |