鳥取県民文化財団情報誌 アルテ
2009年4月
アルテとはスペイン語で「芸術・美術・技巧」などの意味で、英語では「アート」。アルテでは、県民文化会館をはじめ鳥取県内の文化施設のイベント情報を紹介しています。

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「京の狂言」と「江戸の狂言」

 能楽師は役において、分業が守られており、その役は、シテ方、ワキ方、狂言方、囃子方に分かれています。能楽の舞台の中では、間狂言(あいきょうげん)を演じる狂言方も、れっきとした能楽師です。京都の狂言方では鳥取ではおなじみの大蔵流・茂山家。そして東京の狂言方には、よく知られている和泉流・野村家があります。同じ600年の伝統をもつ狂言方であっても、芸風はそれぞれ異なり、人間国宝の茂山千作氏はその違いを「東京は様式性で美しい型で、台詞そのものより型とか舞とかを重点的にし、京都のほうは台詞回しが第一で写実的」と表現し、芸風は「流派」よりも、それぞれの「家」による違いが大きいとしています。

 昔は「男は三年片頬(さんねんかたほほ)」といって、男子は三年に一度片頬がゆるめばいいといわれたほど、笑いを軽視する風潮がありました。しかし、太平洋戦争の敗戦による戦前の諸々の価値観の逆転により笑いは解禁されました。それにより、狂言の価値を正しく認識する土壌が用意されたのです。そのような状況の中、東京狂言界の復興は野村万蔵家によって開かれていきました。ときに万之丞(のち七世万蔵。現・萬)二十歳、万作十九歳でした。

 さて、このたび倉吉を訪れるのは和泉流・野村家の狂言師の面々。軽妙洒脱かつ緻密な表現のなかに深い情感を湛える、品格ある芸の人間国宝・野村万作。亡父六世野村万蔵の洒脱さを継承した人間味溢れる芸に定評のある野村万之介。各分野で非凡さを発揮し、新しき古典芸能者と言われる野村萬斎。大胆かつ緻密な演技で、多くの優れた舞台歴を持つ石田幸雄。粋な「江戸前狂言」を是非お楽しみください。

参考文献/狂言三人三様「野村萬斎の巻 『東京狂言の歴史 小林貢』より」
     野村萬斎、土屋恵一郎 編 岩波書店。 万作の会HP演者の紹介より。
※間(あい)狂言とは…能楽の中の一番面。この場面を演じる狂言師を呼ぶ言葉であり、場面そのものをさす言葉でもある。


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