鳥取県民文化財団情報誌 アルテ
2008年11月
アルテとはスペイン語で「芸術・美術・技巧」などの意味で、英語では「アート」。アルテでは、県民文化会館をはじめ鳥取県内の文化施設のイベント情報を紹介しています。

人と人とのつながりを、演劇で!

 
近年、人が言葉やメッセージを伝える方法が大きく変わってきました。インターネット、携帯電話などの便利なツールで、誰かとつながる、瞬時に届けることができる様になりました。しかし、その中で伝え方が一方的になりがちだったり、相手を思う気持ちが薄れていたり、コミュニケーションのあり方が問われています。
そこで「演劇」という手段を使って、自分の表現や、人と人のつながりを豊かにしようという体験ワークショップが増えています。演劇を使って、何ができるのか?
全国各地で高校生等を対象にしたワークショップの取り組みをしている東京演劇集団「風」の俳優、緒方さんに聞いてみました。

山口県防府市出身 1963年生まれ
1987年風の創立に参画。
上演企画部 西日本プロジェクトのチーフとして、全国の公演のプロデュース。
荒削りな中に、透明感を持った演技と定評。
■主な出演作品
チェーホフ作『かもめ』、『三人姉妹』、サン=テグジュペリ作『星の王子さま』、シェークスピア作『ハムレット』など多数。

東京演劇集団「風」 公式ホームページ
http://www.kaze-net.org/
*劇団員によるブログ等、詳しい情報が満載!

●学校での演劇ワークショップ
中学、高校での演劇の鑑賞公演と並行して、演劇部員を対象としたワークショップに2年前から同行しています。そこで私は役者それぞれ1人の芝居だけではなく芝居全体を見て、どういうレベルにあるかを常に見ています。
学生の方は、発声、身体の動きなど演技の技術的な向上や、作っていく芝居をよく見せるということに意識が傾きがちです。それよりも「作る人にとって、見る人にとって、どういう喜びがあるのか」、「伝えたいもの」、「熱意」だとか、心の持ち方、そういうものが大切だと思うのです。役者同士、相手の演技をよく見る、聞く、受け止める。その上で反応する動きが必要です。
●指導で気をつけていること
演劇をやっている生徒の中には、内向的な子、クラスの人とうまく付き合えない子もいます。つい、「それじゃダメだ」と言ってしまいがちですが、それを抑えて“何でこの子はこうなんだろう、どういう背景があるんだろう”と気にかけています。結構、自信を失くしている子、自己否定する子が多いので、自分自身を肯定できる様に、演劇を通して自分の表現をして、少しでも若い人達に自信を持ってもらいたいと願っています。
●生徒の反応
ワークショップを受けて、「自信が持てる様になった」という感想をよくいただきます。どうしても1回限りの事が多いので、その後の変化をなかなか見られないのですが、こういうワークショップは学校では難しい部分だと思いますので、やっていく中で何か生まれてくれれば良いなと期待をこめてやっています。
5月のワークショップの模様 (場所:とりぎん文化会館)
●演劇という手法でのワークショップ
ワークショップは、遊びの要素もあるので、演劇という手法ならではだと思います。ワークショップの動きには制約があり、その制約の中で行なうことで、自分を発見することがあります。それは、舞台上で役を演じることにもつながるのです。1つの役を10人が演じても、それぞれ相違工夫があり、違う色合いがあります。自分の個性、他人との新しい出会い、お互いの関係を再発見できると思います。
●劇団員のつながり
劇団は今年で創立20年を迎えましたが、東京演劇集団「風」という“1つの演劇のジャンル”を作りたいです。観てくれた人達の心を元気づけてあげられる、そういう劇団にしていきたいと思います。
劇団内でのコミュニケーションの一つとして、時々、本番前にスタッフ全員で握手するということをしています。やはり本番となると、役者、スタッフ、自分の事で精一杯になるので、お互いに仲間がいる事を感じる、皆で支えられる、安心できることが必要です。握手の他に、円陣を組んだり、ビーチボールを投げ合うこともありますよ(笑)。演劇は、人を支える表現を大切にすること。良い舞台は一人ではできないですから。
●12月7日(日)、「Touch 〜孤独から愛へ」鳥取公演について
この作品は、孤児の兄弟が、新たな人との出会いで、相手を思う気持ちや自身の生き方に目覚めていくという内容です。今まで、全国の学校公演も含めて800回以上、上演しています。学校ですから、女子高、男子の工業高校、進学校などで、毎回様々な反応があります。ただ、この10代の持っている普遍性は同じだと思います。演劇を初めて観る人もいれば、仕方なしに観に来る人もいる(笑)。演じていて、客席で身を乗り出している姿が、舞台から見えるんですが、それが嬉しいですね。演じながらも、反応は気になりますから、客席に伝わっていると思うとホッとします。同じ空間を2時間共有している。だから、今、そこにしかない感覚を大事にしたいです。
*ワークショップ「体験型講座」を指す用語。体験型の講座の意味でのワークショップは、問題解決やトレーニングの手法である。(出典::フリー百科事典『ウィキペディア』)
緒方さんからのメッセージ
以前、鳥取県内では米子、境港で劇団の公演はありましたが、鳥取では初公演になります。
ぜひ、僕達の芝居に込めたメッセージを「生の舞台」で感じていただきたいと思います。
緒方さん ラジオ出演決定!!
BSS山陰放送 ラジオ
「アートな生活 ココロのサプリ」
11/20(木)10:15〜10:20頃(予定)
*詳細時間は変更になる場合があります。
この5月と8月、高校の演劇部を対象とした、東京演劇集団「風」による演劇ワークショップが県内で開催されました。
このワークショップに参加された学校の1つ、八頭高校演劇部の顧問である坪倉先生にお話を伺いました。
〔顧問として〕
八頭高演劇部の顧問としては4年目です。赴任した1年目に、すぐ3年生が引退していなくなり、部員がゼロになったので、私が1年生を勧誘し、5人程度で再出発しました。この時、演劇部が「自分の居場所」になった生徒もあった様です。何もないところから始めたということもあり、本校演劇部は、“自分達の表現したいものをやろう、独自のカラーを出そう”という気持ちを持って活動しています。
日常の活動の中では、部員同士お互い不満がぶつかったり、大会直前に意見の食い違いがあったりもしました。そういう場では、私は聞き役というか、とにかく思いを吐き出させる様にしました。また、タイプの違う子が部活動を通じて仲良くなって、意外だなあと感心することもありました。
〔ワークショップを受けて〕
6月の県高校演劇部の東部地区予選では、出来に満足いかなかった点も多く、部員が自信を失いかけていました。県大会に行けることになったものの、手ごたえがなかったのです。しかし、8月に開催されたワークショップを受けた時に、生徒たちの良いところを見つけてくださり、自信を回復し、ポジティブな気持ちになれました。このシーンはこんな気持ちでいえばいい、息が上がっていてもそのままでやればよいなど、生徒の演ずるキャラクターをプラスで捉えてもらい、やっている事の意義付けができ、不安が解消されました。
〔若い人たちに望むこと〕
演劇には、何もないところから架空の世界を作れる、形にできる、そういう良さがあります。割と若い人の方が、頑なで発想がカタイところもあるのですが、遊び、自由な精神でやってほしいです。自分ができることを見つけ懐が広くなれば、「こういう人もいるんだ」と他の人を認められる、人間としての幅が広がっていくと思います。
東京演劇集団風
Touch◆孤独から愛へ◆
アメリカ社会の底辺を生きる孤児の兄弟が、
ある日、初老の紳士と出会う。
それは、何かが変わる始まりだった・・・。
この作品について
●原題は「孤児たち」(=オーファンズ)。1985年シカゴで初演。その後、オフブロードウェイでも上演、絶賛を浴び、1987年には映画化もされる。
●日本では、劇団四季が1986年、87年に日下武史、市村正親などで上演。2000年には、根津甚八、椎名桔平などで上演されるなど、演劇界で評価の高い作品。
●東京演劇集団「風」では、1991年に初演、今まで全国で800回を超える公演回数を誇る。
2008年12月7日(日)
◆ 午前の部 開場10:30 開演11:00  終演(予定)13:15
◆ 午後の部 開場14:30 開演15:00  終演(予定)17:15
会場:とりぎん文化会館 小ホール
チケット(全席自由):
一般:3,000円(2,500円)
高校生以下・身障者〔介助者〕:1,000円
※身障者の方は、購入時及び入場時に障害者手帳などをご提示ください。
※( )内は、財団友の会・団体10名以上料金
※未就学のお子様はご入場をご遠慮ください。
※当日500円増(一般のみ)
プレイガイド
【東部】とりぎん文化会館
【中部】倉吉未来中心
【西部】ビッグシップ
チケット好評発売中!!
鑑賞された方の感想
「素晴らしい人生の一瞬をありがとう。」
「いっぱいはげましてもらい、勇気をもらいました。」
「一番目をひかれたのが、セットが凝っているなという事。」
「人間の強さと弱さがよく見えました。」
「迫力ある演技に、最後は泣いてしまいました。」
「もっと素直になりたい。肩を抱いて、元気づけてくれる人がほしいと思った。」
お問合せ先:とりぎん文化会館(0857)21-8700

| 目次にもどる| バックナンバー|

| 県民文化会館ホームページTOP | 鳥取県立倉吉未来中心ホームページTOP | 鳥取県文化振興財団ホームページTOP |