鳥取県民文化財団情報誌 アルテ
2008年6月
アルテとはスペイン語で「芸術・美術・技巧」などの意味で、英語では「アート」。アルテでは、県民文化会館をはじめ鳥取県内の文化施設のイベント情報を紹介しています。

リクツはいらない!ジャズを楽しもう!
 ブラームスが興味を持ち、ストラビンスキー、ドビュッシーが曲を残した“ラグタイム”。黒人の故郷のアフリカ音楽、カリブ海域のラテン音楽、それに西洋音楽の融合がジャズの原型である。南北戦争後のニューオリンズでは黒人やフランス系白人と黒人の混血クレオールにより演奏されていた。これにインプロヴィゼーション(即興演奏)が発展し誕生した初期のジャズは、1920年代、シカゴ、ニューヨークへと中心を移し、第一期ジャズ黄金時代を迎える…。
 なんて、歴史を紐解くと奥が深くてジャンルも複雑そう?そんなお勉強は抜きにして、楽しんでこそThat Jazz!ジャズの達人、NHK趣味悠々「国府弘子の今日からあなたもジャズピアニスト」※1 の講師でもある国府弘子さんに、楽しくかっこいいジャズ道の歩き方を案内してもらいます。
※1) 2008年4月2日〜5月28日放送

国府弘子さんにお聞きしました。

ジャズはアドリブが多く初心者には複雑に感じます。
演奏形式を分かりやすく教えていただけますか?
その曲のテーマ(メロディー)をまず弾いてから、続いてそのコード進行に沿って何回かアドリブするのが定番です。最後にまた、メロディーを演奏して終わる。つまり、テーマ〜アドリブ〜テーマというのが、基本的なジャズの演奏形式。まあ、ジャズのことなんで(笑)、いろんな場合がありますが。
大学でクラシックを学んでいて、ジャズの世界にはすんなり入れたのですか?
映画音楽もビートルズも好きで、ジャズのコピーなどもやりました。とはいえ、譜面を見て練習することは得意でしたがアドリブになると「さあ困った!」というプレッシャーの枠があって、その枠の中にしかいられないんだという自己嫌悪に陥って苦しかった時期もあります。音大卒業後ニューヨークに行ってうんと苦しんで、ある日ギッシリ書き込んである譜面と真っ白な譜面が二つあったとき、「真っ白な譜面のほうが楽」って感じたんです。
ショパンやリストは譜面を練習すればよいですが、
ジャズはどうやって身につけたのですか?
自由に弾け、それがジャズだ!・・・・なんて言われたって、そりゃ急にはムリ。かっこいいなあ、と憧れる演奏を何度も聴いて盗み、さも自分が思いついたかのように弾く(笑)。“耳コピー”※2はジャズの世界では実に有効なのです。頭のメモリーがいっぱいになり、誰の演奏から何を盗んだかあやふやになってきた頃、けっこう自分の発想でイケるようになるんです。耳を鍛えようね。心の耳も全開でいこう!
国府さんがジャズに出会って得たものは何ですか?
ジャズとはコミュニケーションの音楽。ジャズの演奏法を学んだおかげで、自分がそれ以前に比べて格段に「人の気持ちをわかろうとする、思いやりのある人間」になれた、と思うんです。自分の想いを熱く伝えることと同時に、相手の話をじっくりきくことも大事だよね。ジャズと人生は常にリンクしているんです。
※2) 耳コピー…音楽に関する俗語。曲中で実際に演奏されている音を聞き取って楽譜を書き起こしたり、楽器で再現したりする技術のこと。

今月の顔

国府弘子(ピアニスト・作曲家)
東京都出身。
テレビやラジオのDJをはじめ活字メディアにもエッセイを寄稿するなど多彩な活動で全国的な人気を集めるジャズ界のスーパー・レディ。
国立音楽大学ピアノ科在学中にジャズに目覚め、卒業後単身渡米。ジャズ界の重鎮バリー・ハリスに師事。帰国後1987年ビクターJVCレーベルと契約。その後1年に約1枚のペースで自己のアルバムを日米で発表。ピアノと作曲両面で、クラシックからジャズ、ブラジル音楽やラテンまで、一つのジャンルにこだわらないマルチな取り組みで、独自の国府ワールドを確立、多くのファンに慕われる。
国府弘子オフィシャルホームページ
http://kokubuhiroko.net
メッセージ この度は、お招きありがとう。楽しみに伺います。私も当日は思いっきり、「私の音楽」で熱い気持ちをお届けしたいと思います。
 春にはNHK教育テレビでジャズピアノ講座を担当いたしましたが、「国府弘子の音楽」=ジャズ、というよりも、たくさんのいろいろな音楽から素敵な栄養をいっぱいもらった、「歌心あふれるピアノミュージック」だと自認しています。もちろん、その中でジャズは重要な栄養のひとつ。私が永遠の「ジャズファン」である事は確かです。
 私と私の自慢のトリオでお届けする音楽の見せ所は、私コクブが日々の喜び、哀しみを精一杯投入したオリジナル曲の心打つメロディー(と自分では思っているワケ笑)。ですから鳥取のジャズファンの方には、ピーターソンやエヴァンスのコピーをやってくれ!なんて期待をなさらないでほしいんだけど(笑)、ジャズファンもジャズ初心者もひっくるめて、ともかく一緒に幸せになれるひとときを過ごしましょう!
 このコンサートを、多くの皆さんに聴いて楽しんでいただけますよう。お会いできるのを楽しみにしています。

CDでジャズまずは聴いてみよう♪あまたある作品から国府弘子さんのおすすめピアノ・ジャズCDを教えてもらいました。

● マッコイ・タイナー
 「バラードとブルースの夜」

後年は怒涛の“音の嵐”を鍵盤にぶつけたマッコイ。しかし初期の名盤では、いたってシンプルなわかりやすい演奏が聴けるので、ジャズ入門者には“耳コピー”に最適なアルバム。

● レッド・ガーランド
 「グルーヴィ」

コロコロと粒立ちのよいピアノのタッチ、両手で粋なコードを響かせながらのアドリブ。聴きやすくてスウィングしている、この楽しい演奏は、あなたの教則CDとしてもきっと最適。

● ビル・エヴァンス
 「ワルツ・フォー・デビィ」

タイトル曲がショパンやドビュッシーみたいに美しい素敵なワルツなので、違和感なくジャズの魅力に手招きされる。でもリリカルで美しいだけじゃない。コワイくらい壮絶な、その鋭角的な演奏でヤケドしてみればわかる!

● オスカー・ピーターソン
 「プリーズ・リクエスト」

惜しくも2007年にこの世を去った「鍵盤の帝王」。ただ聴いて感嘆すべし。ともかく超絶技巧、それでいてこんなに楽しくハッピーな世界を作れる人は今なかなか見当たらない。これぞ、極上のエンターテイメント。


映画でジャズ目でも楽しもう♪耳の次は目でもジャズを楽しみたい。伝記からフィクションまでジャズの香りたっぷりの名作をご紹介します。( )内は監督名/製作年

ジャズメンの軌跡

グレン・ミラー物語(アンソニー・マン/1953)
ベニー・グッドマン物語(ヴァレンタイン・デイヴィス/1955)
バード(クリント・イーストウッド/1988)

クラブシーンがのぞける

コットン・クラブ(フランシス・F・コッポラ/1985)
ギター弾きの恋(ウディ・アレン/1999)
シカゴ(ロブ・マーシャル/2002)

ジャズメンが音楽を担当 【 】内はジャズメン名

大運河(ロジェ・ヴァディム/1956)【モダン・ジャズ・カルテット】
死刑台のエレベーター(ルイ・マル/1957)【マイルス・デイヴィス】
危険な関係(ロジェ・ヴァディム/1959)
【セロニアス・モンク、アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズほか】
ラウンド・ミッドナイト(ベルトラン・タベルニエ/1986)【ハービー・ハンコック】

 邦画にもあった!

上海バンスキング(深作欣二/1984)
ジャズ大名(岡本喜八/1986)、スウィングガールズ(矢口史靖/2004)


地元でジャズ仲間をさがしてみよう♪身近に情報をキャッチするには、仲間を見つけるのが一番。鳥取県内のジャズ情報スポットです。

 

Lime Stone(ライムストーン)

場所 倉吉市上井町1丁目10-18津村ビル1F
時間 19時〜25時(日曜定休)
電話 0858-48-1317
1950年代から最近のジャズ迄、スピーカーやアンプにこだわったLPの音を楽しめる。

川一銀座倶楽部

場所 鳥取市川端一丁目119
時間 19時30分〜24時(月曜定休)
電話 0857-21-7500
2003年7月に鳥取市にオープンしたライヴもできるミュージック・バー。JAZZのほか60's&70'sのR&B、ROCK、BLUSE等のグッド・ミュージックも流れる。
 
 

サージェントペパーズ

場所 米子市両三柳3048-12
時間 11時〜20時(木曜定休)
電話 0859-33-0245
ロック、クラブ系、ジャズを中心に取り扱う中古レコード店。ジャズのLPが充実している。

境港妖怪ジャズフェスティバル2008

場所 JR境港駅前特設ステージ
時間 7月26日(土)17時〜22時
電話 0859-47-1056(事務局)
毎年恒例となった野外ステージ。出演は、寺井尚子カルテット、日野皓正クインテット、Youkai Super Express。
 

ジャンルを超越して様々な共演者からの熱いラブコールが絶えないオンリーワンのピアニスト国府弘子。「あ、うん」の呼吸で自由自在の演奏を放つ、スペシャルトリオによるライブを倉吉未来中心で開催。会場にはバーカウンターを設置します。ライブハウススタイルでドリンク片手に国府ワールドをお楽しみください。
 
日時 2008年7月4日(金)
開場17:45/開演18:30
会場 倉吉未来中心 小ホール
チケット 5,000円
※友の会・団体料金(4,800円)
※当日各500円増
プレイガイド 【中部】倉吉未来中心、トミヤ楽器店、はとや楽器、三響レコード、TSUTAYA(倉吉店・倉吉中央店)
【東部】とりぎん文化会館(鳥取県民文化会館)
【西部】ビッグシップ

国府弘子さんから
スペシャルトリオのご紹介

頑固で単刀直入な洋一君と、おっちょこちょいでガマンのきかない私はケンカもたびたび。そうかと思えば一見静かなる男タッピーも、ある日突然1ヶ月も失踪して周囲をお騒がせしたことがあり、いわば3人とも問題児!?
ただの仲良しトリオだと思ってナメてかかるとヤケドするよ(笑)。





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